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石人とは

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キルギスで見られる人を象った記念物を石人と呼ぶのは日本人だけだろうか。英語では単にstone carvingという言葉を使っている。
『The Stone Carvings at Burana Tower』は、ブラナの塔に置かれている石人は戦士たちに栄誉を授けるための記念碑となる墓石である。アルタイに突厥が建国した552年、6世紀中頃からキルギスの土地に石人を戦うことを発揚するものとして表すようになった。この汗国は、西突厥が建国した時に、天山、セミレチエそして東トルキスタンの一部を合併した。
チュー、イシク・クルそしてナリンにあった石人をブラナ野外博物館で見ることができるという。

石人の中で、右手に盃を持ち、左手で武器を持つ男性の彫像ははっきりと見分けることができる。石人は理想化された突厥の戦士を表しているという。
同石人の図解
実物の写真では分かりにくいが、戦士は2本の刀を左腰につけていて、背中には長い髪が腰まで届いている。これはサマルカンド、アフラシアブの丘で発掘された宮殿の壁画に表された西突厥人の後ろ姿に似ている。

キルギスの人々は今でも石人をバルバルと呼ぶ。バルバルは人間の姿ではない墓石で、戦士が殺した敵の数だけある。
石人のある場所で行われた考古学的な発掘で、石板を垂直に立てた囲いが、葬礼儀式のためにつくられたものであることを検証した。人間の埋葬はここでは行われなかった。ここは食べ物と火を必要とする弔いの儀式と宴会の場所だった。戦士とその家族の墓は、近くの別の墓域にあるという。
戦士を馬と全ての装備とともに埋葬するのは古代のテュルク系に典型的なものであるという。
これはビシュケクの国立博物館のパネルで示されていたことだった。
確かに、発掘によって石板を立てて並べた四角形の囲いとその1辺の中央近くに石人が立てられていた状態が出土している。
その下の図では、墓地には四角い囲いと円形の囲いとがあること、円形の方に人が埋葬されていたことが示されている。戦士の場合には馬も一緒に葬られている。

古いテュルク系文化の中で、キルギスには特徴があった。例えば、アルタイやモンゴル、トゥバでは彫像は顔を東に向けているが、天山ではしばしば西を向いている。婦人の石人は先祖崇拝の墓石として徐々に現れた。
天山とセミレチエの特別なグループの石人は婦人の顔で3つの突起のある冠を被っている。ある研究者は、子供と戦士の保護者であるウマイ女神のイメージを重ねているという。
左の人物の顎の下の帯は髭だと思ったが、女性像だった。
3つの飾り板のついた冠というと、仏像の三面頭飾(三面宝冠)を思い出す。

一つの石人の反対側の端に両刃の剣、丸いシンボルと続かない線がある。このような目印は青銅器時代後期にシカが描かれていた石の特徴である。そこでは、指導者や名のある兵士のような人々の石彫記念物とされた。前2千年紀-前1千年紀初頭に造られた。現在では、石に彫刻されたシカの図は、バイカルからモンゴル、トゥバそしてアルタイにわたって見ることができる。これは、キルギスの古い住民は他の中央アジア東方と関係があることを物語っている。
古い石彫記念物の反対側を使って500年後に石人を造ったのは、テュルク系の人々の独特のものであるという。
これはきっとイシク・クル湖から運んで来た石人だろう。それにしても、青銅器時代の岩絵のある人の形に近い石を上下逆にして石人にしていたとは。このような岩絵のある石が戦士の勇敢さを示す特別なものと捉えていたのか、それとも、ただ石人像に相応しい形というだけだったのか。

死んだ男性の戦での価値は、完璧に整えられた身だしなみの三面の石人に反映されている。ベルトの装身具はサーベル、鞘に収まった両刃の剣、火を起こす道具を入れる小さな袋や食器類などという。
騎馬遊牧民は馬で遠出する時にベルトに様々な道具を吊り下げた。それが戦士の正装でもあったようだ。
後に腰佩という装身具になる。腰佩についてはこちら
突厥人の腰佩の図版がある。

突厥の金帯飾り 出土地不明 時代不明  
『週刊シルクロード12キルギス』 に掲載されていた写真(ユニフォト)で、金細工の部分に狩猟紋(狩猟する絵)が描かれているという。

石人が造られたよりも後の時代のもののように思われる。






関連項目
ブラナ野外博物館についてはこちら
ビシュケク、キルギス国立博物館に展示されていた石人はこちら
チョン・ケミン渓谷、アシュ・ゲストハウスの庭に集められていた石人はこちら
鹿石の帯に吊り下げられた武器と新羅古墳出土の腰偑
新羅の腰偑は突厥の金帯飾りに似ている

※参考文献
「The Stone Carvings at Burana Tower」 Kubatbek Shakievich Tabaldiev
「週刊シルクロード12 キルギス イシク・クル湖ビシケク」 2006年 朝日新聞社


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